老後生活は、年金だけでは心配という声をよく聞きます。
毎年、誕生月に来る「ねんきん定期便」を見ると、「これだけしか、もらえないのか・・・」とため息交じりに言いたくなることも。
言われて久しい「老後資金は自分で作る時代」も、実際に自分の年金がいくらもらえるか分かると、何か対策しなくてはと思います。
iDeCo(イデコ)は、少額からコツコツと年金を準備できる国が用意した制度です。
いわゆる、公的年金では不足する分を自分で補うためのものです。
普通に貯金しただけでは、中々お金を増やせない現代において、「税制優遇」と「資産運用」を使えます。
「資産運用」はリスクがつきものですが、リスクを負いたくない人には定期預金も用意されています。
利率は0.002%なので、ほとんど資金は増やせません。
ただ、定期預金でも「税制優遇」の対象となり、所得税・住民税が節税できる仕組みです。
また、「資産運用で資金を増やしたい」という方にも、長期投資に向いている商品(投資信託)を用意してあります。
こちらは、「資産運用」しながら「税制優遇」も受けられる仕組みです。
そんなiDeCoの特徴を、次項から分かりやすく説明していきます。
目次
iDeCoとは?
iDeCoとは「個人型確定拠出年金」の愛称で、個人で年金を作る制度です。
簡単に言うと、資産運用で年金作りを行えます。
貯金よりも大きく資産を増やせる可能性があります。
それは、iDeCoには長期運用に適した商品が厳選されているからです。
iDeCoの段階は大きく分けて、以下の3つに分けられます。
上から順番に解説していきます。
診断
まずは、ご自身の加入資格があるかを判断してもらいましょう。
以下のiDeCo公式サイトで、判断してもらえます。
ここで、ご自身の加入資格に沿った掛金の上限金額が決定。
条件によって掛金は変わりますので、具体的な金額はのちほど紹介します。
運用
運用は月々5,000円以上で、上限額内で掛金を設定できます(年に1回は変更可能)。
上限枠いっぱいまで使っても良いですし、半分くらいでも構いません。
2022年5月からは65歳まで運用期間が延長されます。
iDeCoで用意されている商品は、証券会社によって異なります。
よって、購入する商品を決めてから証券会社で口座開設をしましょう。
それについては、以下の記事を参考にしてください。
実は間違っていた!? イデコのオススメ証券会社選び受取り
受取りは基本的に60歳以降となり、分割や一括で受け取るかを選択できます。
また、その両方で受け取れることも可能です。
受取りは70歳まででしたが、2022年4月からは75歳まで選択できるようになります。
iDeCoの掛金はいくらまで?
では、実際の掛金はいくらまで可能でしょうか。
公式サイトの情報をまとめると、以下のようになります。
加入者 | 月額上限 | 年額上限 | |
自営業 | 6.8万円 | 81.6万円 | |
会社員・公務員 | 企業年金なし | 2.3万円 | 27.6万円 |
企業型DCに加入 | 2.0万円 | 24.0万円 | |
DBと企業型DCに加入 | 1.2万円 | 14.4万円 | |
DBのみに加入 | |||
公務員等 | |||
専業主婦(夫) | 2.3万円 | 27.6万円 |
※DC:確定拠出金 DB:確定給付企業年金、厚生年金基金
自営業の方は国民年金しかないので、iDeCoの上限金額は高く設定されています。
会社員の方は条件によって異なりますが、月額2.3万円が一番掛金が高い条件です。
ただ、これらの金額は上限金額です。
たとえば、条件が2.3万円の方が毎月1万円の掛金でも問題ありません(下限は5,000円)。
ご自身が、どのケースにあてはまるかを確認しましょう。
iDeCoのメリット
iDeCoのメリットを実感するのは、資金が増えてきた60歳近くになった時だと思われがちです。
しかし、現在働いている現役の方でも、iDeCoを始めた方はメリットを受けられます。
iDeCoのメリットは、以下の3つに分けられます。
- 掛金全額を対象に所得税・住民性が節税できる
- 運用で得た利益が非課税になる
- 60歳を過ぎて受け取るときも税制優遇が適用される
iDeCoは、ただお金を貯めるだけの積み立て投資ではありません。
積み立ての間も、節税や受取り時にも税制優遇が受けられます。
これらメリットの内容について、見ていきましょう。
所得税・住民税が節税できる
iDeCoの掛金は、全額を所得控除できます。
具体的な金額は、ご自身の条件によって異なります。
以下のところで、節税効果のシミュレーションが行えますので、試してみましょう。
たとえば、44歳で年収500万円の会社員が、毎月2万円の掛金を20年間行った場合。
約100万円の節税効果があります(2022年5月から加入期間が65歳まで延長を適用)。
iDeCoの掛金で所得控除を受ける場合は、年末調整または確定申告が必要です。
給与所得がメインの会社員の場合、iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」に該当します。
iDeCoに加入すると毎年10月~11月に「小規模企業共済等掛金払込証明書」のハガキが届きます。
年末調整のときに、そのハガキを添付する必要があるので、無くさないように注意しましょう。
運用益が非課税
投資の利益や定期預金の利息には、20.315%の税金がかけられます。
iDeCoでも運用益が発生しますが、そららに対する税金はゼロとなります。
すなわち、得られた利益はそのまま受け取れ、運用に回せるので「複利効果」を活かせます。
複利効果とは
運用で得た利益を再投資して増やしていくこと。すなわち、利息が利息を生んでふくらんでいくことです。
受取時に税制優遇
iDeCoのお金は60歳以降に受け取れますが、方法は2種類から選べます。
1つは、一括で受け取る方法で「退職所得控除」の対象になります。
退職金が少ない場合は、税金がゼロになる可能性も。
もう1つは、複数回の分けて受け取る方法です。
「公的年金等控除」の対象となります。
受取り回数によって手数料で差がつく場合もあります。
さらに、金融機関によっては、その両方を併せた形で受け取ることも可能です。
すなわち、一部は一括で受け取り、残りを複数回に分けて受け取ることも可能。
こうすることで、両方の税制優遇を活用できます。
良いことばかりのiDeCoですが、デメリットもあります。
iDeCoのデメリット
iDeCoは新しく生まれた年金制度ですが、いくつかのデメリットがあります。
iDeCoのデメリットとして、取り上げるのは以下の3つです。
- 60歳まで資金が引き出せない
- 元本保証しない商品は資産が減る可能性がある
- 各種の手数料がかかる
これら3つの内容について、詳しく見ていきましょう。
60歳まで引き出せない
人によっては、デメリットの1つになるかもしれません。
ただ、個人的にはデメリットではないと思っています。
iDeCoは年金を作る制度なので、60歳まで引き出せないことは逆にメリットでないかと。
反対に、途中で引き出せてしまうものであれば、本来の目的である年金の確保が難しくなります。
資金が減る可能性がある
iDeCoには2種類の商品が設定されています。
1つは元本保証の定期預金で、もう一つは投資信託です。
資産が減るリスクがあるのは、投資信託を選んだ場合です。
どうしても、リスクを負いたくない方は、iDeCoにある定期預金を選択しましょう。
定期預金では、資金を増やすことは難しいです。
iDeCoで用意されている定期預金の金利は0.002%のもので、手数料を支払うと資金は増えませんが、働いている間の節税対策にはなります。
ただ、老後資金を増やす目的がある場合は、投資信託を選んだ方が良いでしょう。
確かに投資信託を選ぶとリスクはゼロではありませんが、リスクを減らす方法はあります。
よろしければ、下記の記事を参考にしてください。
SBI証券で「自分年金」作りに最適なiDeCoのオススメ商品4選!各種の手数料がかかる
iDeCoを行う場合は、さまざまな手数料がかかります。
証券会社は手数料の無料をうたっているところもありますが、少なくとも以下の金額が必要です。
証券会社に支払うのではなく、国民年金基金連合や信託銀行に支払います。
名目 | 金額 | 支払い先 |
加入・移管時手数料(初回) | 2,829円 | 国民年金基金連合会 |
加入者手数料(毎月) | 105円 | 国民年金基金連合会 |
口座管理手数料(毎月) | 66円 | 信託銀行 |
口座開設時に初回だけ2,829円。
あとは、毎月積み立て時に合計171円(105円+66円)が必要です。
そして、運用する商品の「信託報酬」もかかります。
これは商品によって異なりますので、なるべくコスト(信託報酬)が低く、運用成績が良い物を選ぶのが良いでしょう。
これ以外には、60歳を過ぎて資金を受け取るときにも、振り込みの都度440円かかります。
金融機関によって金額は変わりますので、以下のサイトでチェックしてみましょう。
まとめ
iDeCoは「つみたてNISA」と比較されますが、iDeCoの方が税制面で優遇されている制度です。
働いている現役時代から早めに始めると、その恩恵はより大きく受けられます。
「つみたてNISA」よりも年金作りのためなら、iDeCoを選択する方が良いでしょう。
もちろん、両方を平行して運用は出来ます。
iDeCoのメリットとデメリットを、もう一度まとめると以下のようになります。
iDeCoのメリット
- 所得税・住民税が節税できる
- 運用益が非課税になる
- 受取時も税制優遇
iDeCoのデメリット
- 60歳まで引き出せない(年金確保の面ではメリット)
- 資産が減る可能性がある(投資信託を選んだ場合)
- 各種の手数料がかかる
iDeCoのメリットとデメリットを取り上げましたが、メリットの方が上回っている制度です。
iDeCoは申し込んでから口座開設まで1~2カ月かかります。
今回ご紹介したiDeCoの内容をふまえて、ご自身にあった年金作りをはじめてはいかがでしょうか。