2024年から始まる新NISAでは、年間360万円(成長投資枠:240万円、つみたて投資枠:120万円)が設定されます。
非課税期間も無期限になることから、この設定枠を使って長期的な資産形成が可能です。
そのなかで、新NISAを利用して高配当を目指す場合、どの商品を購入した方が良いのか悩んでいませんか?
特に、高い成長が期待できる海外ETFは種類も多く、どれを選ぶべきか迷ってしまいます。
ETFとは
「Exchange Traded Fund」の略で、日本語でいうと上場投資信託となります。ETF自体が多くの企業を含んでいるので、購入することで分散投資が自然に行えます。
そこで、今回は成長性の高い商品として、注目すべき海外ETFを紹介します。
海外ETFは、日本ETFよりも高い配当が期待できるだけでなく、日本とは異なる経済動向や通貨変動によるリスク分散効果が可能です。
同時に、新NISAで購入する場合に、どのくらいの金額で購入すれば良いのかを示します。
目次
投資信託とETF
高配当を目指すため、新NISAの成長投資枠で投資信託とETFのどちらを購入した方が良いのか?
それを考えながら、まずは投資信託とETFのメリットとデメリットを比較してみましょう。
投資信託のメリット
1.自動運用
投資信託は各証券会社のファンドマネージャーと呼ばれるプロが運用します。
彼らは、専門知識を屈指して市場動向や企業の業績を分析しながら、ターゲットとなる指標の変動に合わせることが可能です。
そうすることで、私たちが自分で運用しなくてもターゲットの指標に近い収益が出るような運用を行います。
2.商品数
投資信託は、色々な市場に対する商品が多数用意されています。
その中で、自分の好みに合ったものを選択可能です。
投資信託のデメリット
1.売買の制約
投資信託は、1日1回の基準価額での売買しかできません。
株式のように上場されていないので、刻一刻と変化する値段でタイムリーに売買が出来ない商品です。
よって、1日の中で高いタイミングで売りたいということは出来ません。
2.高コスト
メリットの項でも書きましたが、投資信託の運用はプロが行います。
そのため、運用管理費用(信託報酬)などのコストがかかります。
どのくらいのコストが掛かるかは、商品ごとに信託報酬は決められているので確認しましょう。
同じ市場を対象にした製品同士なら、信託報酬が低い方がオススメです。
ETFのメリット
1.低コスト
一般的に、ETFの方が投資信託よりも運用費用が低くなります。
単純比較はできませんが、S&P500を対象にした投資信託とETFを比較してみましょう。
投資信託のSBI・V・S&P500インデックス・ファンドは信託報酬が0.0938%です。
ETFのiシェアーズS&P500ETFの経費率は0.03%です。
ETFの方が安いことが分かります。
2.売買
株式と同じように上場しているので、証券取引所が開いている時間帯でリアルタイムの取引が可能です。
また、株式と同じように指値注文や成行注文なども出来ます。
ETFのデメリット
1.購入
株式と同じく上場しているので、証券会社以外では購入できません。
新NISAを銀行で行う場合、海外ETFは購入不可です。
2.自動運用
ETFの分配金は自動で再投資する仕組みになっていません。
よって、買付を行う場合は自身で設定が必要です。
ただし、個人的には分配金を投資に回さず、高配当生活をする上ではメリットに思えます。
海外ETFのオススメ3選
次に、米国市場をターゲットにした3つの高配当ETFを紹介します。
日本株を対象とした高配当ETFもありますが、米国ETFと比較するとコストが高いのでオススメしません。
ちなみに、日本株ETFのNEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信における配当率は4.38%で、コストにあたる信託報酬は0.28%になります。
これから紹介する海外ETFと比較すると、コストが1桁高いのが難点です。
SPDRポートフォリオS&P500高配当株式ETF(SPYD)
SPYDは、S&P500高配当指数に連動する投資成果を目指す商品です。
この指数は、S&P500の中で配当利回りが高い上位80社の株価を指数化しています。
すなわち、S&P500高配当指数が上昇すると値上がり、下落すると値下がる商品です。
配当率は4%~5%で経費率(コスト)は0.07%です。
バンガード 米国高配当株式ETF(VYM)
VYMは、高い配当率を誇る米国企業400社に投資するETFです。
高配当の銘柄を集めたFTSE ハイディビデンド・イールド・インデックスという指数に連動するように運用されます。
すなわち、FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス指数が上昇すると値上がり、下落すると値下がる商品です。
配当率は3%~4%で、経費率(コスト)は0.06%です。
iシェアーズ コア 米国高配当株 ETF(HDV)
HDVは、米国の財務優良企業の中で、高い配当率を誇る上位75社に投資するETFです。
対象となる指数は、モーニングスター配当フォーカス指数で、これに連動するように運用されます。
すなわち、モーニングスター配当フォーカス指数が上昇すると値上がり、下落すると値下がる商品です。
配当率は3%~4%で、経費率(コスト)は0.08%です。
3つの海外ETFを整理
紹介した3つの商品は、それぞれが組入れ銘柄に特徴があります。
どれも違う業界の株式を主力としているのです。
3つを購入することで、自然に分散投資が成り立っています。
整理すると以下のようになります。
SPYD | VYM | HDV | |
配当率 | 4~5% | 3~4% | 3~4% |
配当日 | 3月/6月/9月/12月 | ||
コスト | 0.07% | 0.06% | 0.08% |
銘柄数 | 80 | 400 | 75 |
組入れ上位 | 不動産:23% | 金融:19% | ヘルスケア:26% |
金融:18% | 生活必需品:14% | エネルギー:25% | |
公益事業:14% | ヘルスケア:13% | 金融:11% | |
一般消費財:10% | 産業用:12% | 情報技術:10% | |
生活必需品:8% | エネルギー:10% | 通信:10% |
これらの商品は、成長投資枠で購入できます。
その中で、どのくらいの金額で購入していくのが良いのか次の項で説明します。
高配当生活の目標額と購入額
配当はどのくらいの金額をイメージしていますか?
高額ほど良いですが、それなりに資金がないと難しいです。
予算にあった購入数を決めて、なるべく多く購入しないとある程度の配当が受取れません。
ここでは、具体的な金額を設定してみましょう。
配当目標:月5万円
月5万円を受け取るには、年間60万円(5万円×12ヵ月)の配当金が必要です。
配当率を4%とした場合、単純計算で1,500万円(年間60万円÷4%)のETFを用意しなければなりません。
しかし、新NISAの成長投資枠の上限は1,200万円なので、1,500万円では上限からはみ出してしまいます。
更に、米国の税金が10%取られることを考慮すると、最低年間66万円の配当が必要です。
そして、成長投資枠からはみ出してしまう分は、新NISAに収まらずに日本と米国の両方の税金が掛かります。
筆者も期待して計算してみましたが、新NISAの成長投資枠を使って月に5万円の配当を受け取るのは厳しそうです。
仮に、配当率が5.5%(年間66万円÷1,200万円)くらい高い配当率の商品がないと実現できそうにありません。
新NISAにあるもう1つの「つみたて投資枠」と併用すれば1,800万円になるので、それなら現実的だと思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、つみたて投資枠には、SPYD、VYM、HDVは設定されないでしょう。
新NISAのつみたて投資枠は、現行制度の「つみたてNISA」で設定されている商品が対象だからです。
上限1,200万円分で受取れる配当
では、成長投資枠の上限である1,200万円内で受取れる配当は、いくらになるか計算してみましょう。
ここでも、配当率は4%として計算します。
単純計算では、1,200万円×4%=48万円/年、48万円÷12ヵ月=4万円/月になります。
ただ、前項でも書きましたが、米国の税金が配当から10%引かれるので、実際には約3.6万円/月といったところです。
1,200万円分のETFを購入
成長投資枠の上限である1,200万円に収めた場合に、どのくらいの配当が受け取れるかを計算してみましょう。
そして、どういう風に1,200万円分のETFを購入した方が良いのかを考えていきます。
まずは、米ドルのレートを150円と設定した場合、各商品の価格は以下です。
SPYD | VYM | HDV | 合計 | |
単価 | US$34.57 | US$102.46 | US$97.38 | US$234.41 |
1口 | 5,186円 | 15,369円 | 14,607円 | 35,162円 |
2口 | 10,371円 | 30,738円 | 29,214円 | 70,323円 |
3口 | 15,557円 | 46,107円 | 43,821円 | 105,485円 |
4口 | 20,742円 | 61,476円 | 58,428円 | 140,646円 |
上記の金額を基にして、購入金額を設定していきます。
10年間で1,200万円分を購入
1,200万円のETFを10年間で購入するには、以下のようになります。
・1,200万円÷10年=120万円/年
・120万円/年÷12か月=10万円
この場合は、月に10万円分を購入しなければなりません。
上記の表によると、各商品を3口ずつ購入すると約10万円になります。
20年間で1,200万円分を購入
1,200万円のETFを20年間で購入するには、以下のようになります。
・1,200万円÷20年=60万円/年
・60万円/年÷12か月=5万円/月
この場合は、月に5万円分を購入しなければなりません。
上記の表によると、近い金額にするには例えばSPYDを4口、VYMとHDVを1口ずつ購入すると約5万円になります。
長い年月をかけた方が、月々の負担額は小さく抑えることが可能です。
まとめ
今回は、老後の配当生活を考えた記事を書きました。
対象商品としては、海外ETFのなかで高配当の商品3つをご紹介しました。
結果は、新NISAの成長投資枠に収まらないので、月5万円の配当は難しいことが判明。
そして、非課税の成長投資枠で収めるなら、月3.6万円くらいの配当は可能だということが分かりました。
それでも、それなりの資金(1,200万円)が必要です。
これを20年間で分割して、年間60万円を投資する場合を考えると一つの例としては以下になります。
毎月購入数:金額 | |
SPYD | 4口:20,742円 |
VYM | 1口:15,369円 |
HDV | 1口:14,607円 |
合計 | 50,718円 |
上記が、月々約5万円に抑える購入方法です。
もちろん、これ以外の組み合わせもあります。
これが実践できるかは、個人の懐ぐあいと相談になります。
まずは、現行NISAで口座を開設して新NISAの準備を始めましょう。
新NISAと併用するために、現行NISAを年内に開設して資産を増やそう!